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8.2. その他の仮定法
8.2.1. wishによる仮定法

 wishは願望を意味する動詞であるが、仮定法過去や仮定法過去完了と共に用いることが多い。なぜなら、wishは実現の可能性が低い意味を持つために仮定法と結びつきやすいからである。そして、現在において実現の可能性のないことへの願望や、過去において実現できなかったことへの願望を表すことになる。

 それに対して、hopeも願望を表す動詞であるが、hopeの場合は仮定法を用いることがない。それはwishとは異なり、実現の可能性があるからである。

 (10)
  a. I wish I had a car for personal use.
   (マイカーがあればいいのになあ。)
  b. I wish I knew her address.
   (彼女の住所がわかっていればいいのになあ。)
  c. I wish I were a bird.
   (私が鳥であればいいのになあ。)

 上の3例はいずれもwishに仮定法過去を続けた例である。wishの後はthat節となるが、thatは普通省略され、動詞には過去時制が用いられる。そして、これらの3例が意味しているのは現在においての願望である。
 しかし、3例ともその願望については実現が不可能であることを意味として含んでいる。
 (10a)ではお金がないなどの理由で、マイカーを持つことができないという話し手の残念な気持ちが含まれている。また(10b)でも同様に、住所を知らないことへの残念な気持ちが含まれ、(10c)でも鳥ではないことへの残念な気持ちが含まれている。

 これらの例について時間表示に示すと次のようになる。

(11)


 上において、時間表示を2つにしているのは従属節が名詞節だからである。wishのある主節は上段の時間表示に相当し、仮定法過去を用いている従属節は下段の時間表示に相当している。


 ところで、仮定法は時制の一致とは無関係なので、主節の動詞であるwishが過去時制に変わっても、従属節の動詞はその影響を受けない。
 たとえば、前の3例について主節の動詞を過去時制にした場合も、次のようになる。

 (12)
  a. I wished I had a car for personal use.
   (マイカーがあればいいのになあと思った。)
  b. I wished I knew her address.
   (彼女の住所がわかっていればいいのになあと思った。)
  c. I wished I were a bird.
   (私が鳥であればいいのになあと思った。)

 主節にあるwishを過去時制のwishedにしても、従属節で用いられている動詞には影響を与えない。(*37)

*37  主節の動詞の時制変化から時制の一致を生じる例も実はある。しかし、上の例にみるように仮定を表す従属節では時制の一致を生じさせないのが普通である。


時間的感覚


 ところで、以上はwishに仮定法過去を用いた例であるが、仮定法過去完了を用いた場合は、過去において実現できなかった願望を表すことになる。

 (13)
  a. I wish I had been more careful when I was using the machine.
   (私はその機械を使っていたとき、もっと注意していればよかったと思う。)
  b. She wishes she had married another man.
   (彼女は別の男性と結婚していればよかったと思っている。)

 (13a)では過去において機械の操作に不注意だったことを表している。また、過去においての願望も表すことから、そこには話し手の後悔も含まれているということもできる。
 (13b)では話し手が結婚した当時を振り返り、現在の夫を選んだことを後悔していることが考えられる。

 上の例について時間表示にすると次のようになる。

(14)


 2例の主節は上段の時間表示に相当し、仮定法過去完了が用いられている従属節は下段の時間表示に相当している。

 そして、上段の時間表示が示しているように、話し手の心の位置(M)は現在時に置かれたまま発話される。しかし、その内容は下段の時間表示が示すように、過去の出来事について想像をしながら願望や後悔をしているのである。

(15)
I wish I had bought that stock.
(あの株を買っていたらなあ。)

 上の例もwishに仮定法過去完了を用いた例である。話し手は株を買うことについて、後悔をしていることが考えられる。つまりその過去においては実際に買わなかったのだが、現在においてその株が上がったところを見て、あの時買っておけばというように残念がっている様子が考えられる。


 ところで、仮定法過去完了も当然時制の一致を生じさせることはない。これは仮定法に共通していることであるが、特に仮定法過去完了の場合は形式として過去完了形を用いているために、たとえ時制の一致がまれに生じるようなことがあったとしても、形式上は変わらないことになる。
 なぜなら、英語において過去完了形以上に、以前の時点を表す形式はないからである。

(16)
a. I wished I had been more careful when I was using the machine.
 (私はその機械を使っていたとき、もっと注意していればよかったと思った。)
b. She wished she had married another man.
 (彼女は別の男性と結婚していればよかったと思っていた。)

 そしてこの時間表示については当然次のようになる。

(17)



時間的感覚






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