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5.2.5. 未完結
 まず、次の例を見てみることにする。

 (18) I read the book last night.
   (私は昨夜本を読んだ。)

 上でreadは過去形なのだが、表していることは昨夜1冊の本を読み終えたことである。このように過去形とは出来事を過去のこととして捉えるために、動作については終了の意味を表すことになる。
 
 これに進行形を用いた場合はどうなるだろうか。

 (19) I was reading the book last night.
   (私は昨夜本を読んでいた。)

 上では進行形を用いたために動作に重点が置かれ、動作の継続を意味として表している。
 さて、上の例では先の例でみたような「終了」の意味は現れているだろうか。
 
 実際そのような意味は上の例には含まれていない。なぜなら、上の例では話し手が動作そのものに着目しているだけだからである。
 確かに先の例では過去形から「本を1冊読み終えた」という意味が現れていたのだが、上の例ではその本を読み終えたことについては言及していないのである。そしてこの場合、その本はまだ読み終えていないことが意味として含まれるのが普通である。


時間感覚カット


 この「未完結」の意味から、次の理解は難しくないであろう。

 (20)
  a. The man drowned.
   (男が溺れ死んだ。)
  b. The bus stopped.
   (バスが止まった。)

 上の2例で用いられている動詞に着目してほしい。これらの動詞は先のreadとは性質が少し異なっている。それはいずれも動作動詞には違いないのだが、上は完結的な意味を動詞自体が持っていることである。
 たとえばdrownは溺れ死ぬことを意味するが、それは1回限りである。同じ人が何度も溺れ死ぬことは、生き返らなければ不可能である。
 またstopについても止まることは1度だけであり、また止まるためには再び走りださなければならない。
 これらの動詞は到達や達成の意味を表す動詞であり、たとえ進行形を用いても継続は当然として、繰り返しの意味も表すことはできない。動作動詞には同じ種類でもこのような相違のある動詞が存在している。



 しかし、そのような動詞であっても進行形を用いることができないわけではない。

 (21)
  a. The man was drowning.
   (男は溺れかけていた。)
  b. The bus was stopping.
   (バスは止まりかけていた。)

 日本語の場合、テイタ形は動作動詞の種類及び状態動詞に関係なく用いられる。そこから上の2例についても、たとえば(21a)は「男は溺れていた」というように、日本語話者は間違いを犯すことも少なくはないことになる。
 
 しかし、英語の場合は「〜をしかけている」というように、動作の完結まで至る前の過程的な意味を表すことになるのである。
 そして、この過程的な意味を表すようになるのは、これまで述べてきた「未完結」の意味から理解が容易である。
 動作に着目する進行形を用いることは、同時に完結の意味をなくすことになるが、それは完結的意味を持つ動作動詞の場合、その完結までのちょっとした未完結の時間継続を表すことになる。


時間感覚カット






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