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3.1.2.1. 完了・結果の用法

 これは、ある出来事が発話の時点よりもそれほど離れていない過去において、完結したことを表す用法である。このとき話し手は、生じた出来事が明らかに過去のことであるにも関わらず、現在と関係づけて発話することになる。
 そして、完結した出来事のうち、何らかの事物が結果として残るのを結果の用法といい、残らないのを完了の用法という。

(3)
a. The clock has just struck ten.
(時計がちょうど10時を打った。)
b. The river has frozen.
(川が凍った。)

 上の2例について完了と結果にそれぞれ分類するのならば、(3a)が完了の用法であり、(3b)が結果の用法である。(3a)では、時計が10時を打ったことを表しているが、その結果特に何らかの事物が残るというわけではない。しかし(3b)では、川が凍っているという結果が現在に残っていることになる。

 このように完了と結果の用法については意味上相違が見られるのだが、文脈上はどちらに相当するのかは区別することが難しい場合も多い。また、出来事の完結を表すことには変わりがないため、ここでは2つをまとめて1つの用法として扱うことにする。


 前の2例については、生じた出来事が過去であるにも関わらず過去時制で表さずに現在完了形を用いるのは、話し手がその出来事を心境的に現在と結びつけているためであるが、この用法について時間表示にすると当然次のようになる。

(4)


 しかし完了・結果の用法については、その出来事がさほど離れていない時点と考えられるので、次のようにも示すことができる。

(5)


 出来事時(E)は現在時に近い時点にある。特に完了の用法については、このような時間表示が適切と思われることが多い。
 たとえば(3a)のThe clock has just struck ten. のように時計が10時を打ったことは、現在時から離れていない時点であることが考えられる。そしてその時間的近さゆえに、話し手は現在完了形を用いることになるのだが、上の時間表示の出来事時(E)がどれだけ離れると現在完了形を用いられなくなるかについては、話し手の感覚によることなので一定ではない。

(6)
a. She has just left.
(彼女は今出た。)
b. She has just arrived.
(彼女はたった今着いた。)

 上の2例については、現在からさほど離れていない過去に、生じた出来事と考えられる。しかし、(6a)で彼女が出発したのは5分前かもしれないが、30分前かもしれない。また(6b)についても彼女が到着したのは1分前かもしれないが、1時間前かもしれない。このとき話し手はそのような時間的長さではなく、心境として現在につながりを持つかどうかで現在完了形を用いている。このようなことを踏まえて、時間表示を示し直すと次のようになる。

(7)


 上の時間表示において、ピンク色の部分は完了・結果が意味する出来事が、その範囲内のどこかに生じることを表している。その出来事とは現在時に近いこともあれば遠いこともあるが、どの時点に生じようとも話し手は現在と結びつけて捉えることになる。これは次のようにも示される。

(8)


 仮に3つの出来事が過去に生じたとする。ここで、話し手によっては@からBの3つを現在完了形として捉えることもあれば、AとBだけを現在完了形として捉えることもある。
 この場合AとBを現在完了形で捉えるとするならば、@については過去時制で表すことになる。このように、どの時点に生じた出来事を現在完了形として捉えるかについては、話し手の心境によるのである。


 日本語には英語の現在完了形に相当するような明確な形式はない。日本語で現在完了形を表すためには「テイル」や「タ」形を用いる。このうちタ形は前の2例の日本語訳で、現在完了形に相当する意味として用いている。しかし、タ形はそれだけではなく、過去時制に相当する意味としても用いられる。
 
 たとえば「彼は帰った。」とタ形を用いて発話した場合、この単文だけでは現在完了形と過去時制のどちらに相当するのかはわからないことになる。なぜなら、話し手の心境がどちらを表しているのかは不明であり、それがわかるためには前後の文脈が必要とされるからである。しかし、次のようにすると、たとえ単文であってもその時間的な感覚は明確になる。

(9)
a. 彼は今帰った。
b. 彼はさっき帰った。

 上は「彼は帰った。」に「今」と「さっき」を加えた例である。「今」を加えた(9a)は、話し手がいまだに彼が帰ったことを現在に捉えていることになる。このとき話し手は、彼のことを心境の中に残している状態になる。
 それに対して「さっき」を加えた(9b)は、彼のことにはもはや関心がなく、単に過去の出来事として捉えていることになる。
 
 英語においては(9a)は現在完了形、(9b)は過去時制を用いた例に相当することになるが、これらの「今」や「さっき」については話し手の心境から現れることである。
 そこで、たとえ5分前でも、また30分前でも話し手がいまだにそのことに関心を持っているのならば、現在とは切り離すことなく「今」を用いることになるが、そうでないのならば5分前であったとしても現在と切り離し、過去の出来事として「さっき」を用いることになるのである。類似する例を次に示してみる。

(10)
a. 合格通知が今届いた。
b. 合格通知がさっき届いた。

 日本語の場合「合格通知が届いた。」だけでは、英語の現在完了形に相当するのかそれとも過去時制に相当するのかはやはり不明である。しかし、上の2例にあるように「今」や「さっき」など話し手の心境を表す言葉を加えると、どちらなのかが明確になる。
 
 合格通知といえば、普通はそれが届くことを待ち望んでいる場合が多い。そこで(10a)は、そのことをよく表している例ということができる。それに対して(10b)は「さっき」が表すように、どこかそっけないところがある。

 そしてこの時間的感覚または話し手の心境については、英語でも同じことがいえる。ここで(9)の2例を英語に書き換えた場合は次のようになる。

(11)
a. He has just gone back.
(彼は今帰った。)
b. He went back just now.
(彼はさっき帰った。)

 (11a)は現在完了形、そして(11b)は過去時制を用いた例になる。これらの形式を用いる際の話し手の心境は、日本語においての「今」や「さっき」と同じである。英語話者が日本語話者の考える「今」を念頭に置いたときは現在完了形を用い、「さっき」を念頭に置いたときは過去時制を用いることになるのである。


 また、完了・結果の用法には現在までつながる「最近」を表すために、justやalready、recently、yetなどの副詞が共起することも多い。(11b)で用いられているjust nowは、justとは異なり日本語でいう「さっき」に相当する意味で、過去を明確に表すことから通常は過去時制と共に用いられる副詞である。


 ところで(3b)のThe river has frozen. は、その凍った出来事が現在時からさほど離れていない時点とは考えにくい例である。なぜなら、川が凍るにはある程度の時間が必要であることが普通だからである。したがってこの例については、最初で示した現在完了形の時間表示が適切である。
 また、川が凍るところを実際に話し手が見ることは普通ない。この例にしても、話し手は川が凍った時点を念頭に置いているわけではない。このとき話し手は、目の前に川が凍っているという「結果」を見て、発話しているのである。

(12)
a. My watch has stopped.
(時計が止まった。)
b. He has received a good education.
(彼は良い教育を受けた。)

 (12a)では話し手が自分の時計を見たときに、その時計が止まっていることに気づいて発話したと考えられる。このとき、いつの時点で時計が止まっていたのかについては不明であり、話し手も明確な時点はわからないと思われる。しかし、ここで現在完了形が用いられているのは、時計が止まったのが明らかに過去のことであることは理解しているのだが、念頭にはそのような時点が置かれずに、時計が止まっているという「結果」を知覚として捉えた時点に、焦点が置かれているからである。

 また、(12b)も同様で、実際に彼が教育を受けたのは相当以前のことであると考えられる。教育というのは時間がかかることであり、いうまでもなく、良い教育が結果として残るには相当の時間が必要だからである。しかし話し手は、彼が教育を受けた時点には焦点を置いてはいない。このとき話し手は、教育が結果として彼の身に残っているところを見て発話しているのである。


 以上のことが完了・結果の用法であるが、完了の用法は出来事が完結したことを表し、結果の用法はさらにその結果が存在していることを表している。しかし、いずれにしてもその出来事を、現在から話し手の心境が捉えていることには変わりはない。



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