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2.3.3. 現在のことを過去時制で表す丁寧表現

 現在時制には過去の出来事をあたかも目の前で起こっているかのように表す歴史的現在の用法があるが、それとは逆に現在の出来事を過去時制で表す用法がある。これは歴史的現在とは全く異なる用法であるが、それは相手に対して依頼や勧誘を表すときに、丁寧に伝えることができる用法である。

 この用法に用いられる動詞にはhopeやthink、wonder、wantなどがある。これらを過去時制として用いることで、丁寧な表現にすることができる。なぜ、丁寧な表現にすることができるかについては、過去時制の持っている特徴から理解することが容易である。

(28)
a.A: Did you want me?
(ご用でしたか。)
B: Yes, I hoped you would give me a hand with the painting.
(ええ、ペンキを塗るのを手伝ってもらえないだろうかと思ったんですが。)
(Leech:1971a)
b. I wondered if you could help me.
(手伝っていただけないかなと思ったのですが。)

 上では過去時制が用いられているが、話し手はある特定の過去を念頭に置いているわけでもなく、発話された内容が現在との関係において切り離されているというわけでもない。この場合形式は過去時制であるが、発話していることは現在のことである。
 
 そして丁寧な表現が可能になるのは、間接的な表現をすることができるからである。なぜなら過去時制を用いることで、依頼や勧誘を過去のことであるかのように相手に伝えることができるからである。そのために相手は、すでに過ぎてしまったことや一歩距離を置いたような感覚で受け取ることになる。それは、相手に感覚的な余裕を与えることになり、つまりは相手に対して依頼や勧誘について断る余裕を持たせることになる。

 したがって、(28a)についてI hopedをI hopeのように現在時制にした場合は、相手に対して横柄な印象や押しつけがましさを与えることになる。
 また、最初の質問であるDid you want me? についても、現在時制のDo you want me? ではぶしつけな印象を与えることになるのである。


 ところで、このような丁寧表現は進行形を用いることにより、さらに丁寧度を増すことが可能である。たとえば(28b)に進行形を用いた場合はI was wondering if you could help me.になるが、これはより丁寧度を増した表現となっている。これについては進行形が持っている意味である「未完了」から生じているが、この意味については第6章 の進行形のところで述べていく。


 また、丁寧表現についてはwillやcanを用いた依頼や勧誘の用法もある。

(29)
a. Would you show me the way?
(道を教えていただけませんか。)
b. Could you help me?
(手伝っていただけませんか。)
c. Could you turn off the light?
(明かりを消していただけませんか。)

 上は3例とも過去時制を用いることにより、前の例と同様丁寧に相手に伝えることができる。これらの例についても、現在時制を用いて表した場合は、直接的な印象を相手に与えることになる。しかし、上の場合は過去時制を用いた用法に変わりはないが、意味としては仮定法から生じている。



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